日本の会社でも挨拶はコミュニケーションの基本中の基本ですが、アメリカでもまったく同様で「たかが挨拶、されど挨拶」It's just a greeting, but it's still a big deal.なんです。ここでは、日本とは異なるアメリカ特有のビジネス慣習・マナーbusiness customs and manners という観点から、アメリカの職場ではどのように挨拶が交わされているか、という実態について解説していきます。
目次
アメリカ人と円滑な人間関係を構築するための「挨拶5原則」
アメリカの職場で円滑な人間関係を構築するためには、この「挨拶5原則」は外せません、なので、まず最初にしっかりと押さえておきましょう。どれも当然なことのように感じますが、実際にできていないケースも少なくありません。
原則1: 自分から、平等に
原則2: 常にアイコンタクト
原則3: スマイルを忘れない
原則4: 挨拶を返す
原則5: 挨拶+スモールトーク
それでは、一つ一つ見ていきましょう。
挨拶の原則(1)自分から、平等に
まず、挨拶は「自分から」Initiate a greeting.が大事です。特に新人の場合は、他の人から指摘される前に、自分から率先して挨拶をしましょう。
また、日本の会社では上役の場合、部下から挨拶をするのが当然だ、という風潮があるかもしれませんが、アメリカではないです。たとえあなたが上役であっても、誰に対しても平等にequally 挨拶を交わすよう心がけましょう。「あの人は苦手だから」といって、特定の人には挨拶しない、というのもNGです。挨拶をされなかった人は「避けられているのかな」などと、社内の微妙な雰囲気を察知してしまうものです。それでは、円滑な人間関係を構築することなどできません。
挨拶の原則(2)常にアイコンタクト
人と会話するときは必ずアイコンタクトeye contact 。これはアメリカでは鉄則です。挨拶でも同様に、常に相手の目を見てlook in the eye挨拶をします。挨拶をする側も、される側も仕事中であっても手を止めて、相手をしっかり見ながら挨拶するようにします。
視線を合わせないavoid eye contact 、目をそらすlook away、などは言うまでもなくNGです。
挨拶の原則(3)スマイルを忘れない
挨拶をする側も、される側も、常にスマイルを忘れないようにKeep your smile.しましょう。自分から挨拶をしても、またしっかりアイコンタクトを取っていたとしても、仏頂面sulky faceだったとしたら相手はどう感じるでしょうか?
こんな仏頂面されたら、自分も気分も悪いし、相手の印象も悪くなりますよね。
一方、私の体験談ですが、毎朝出社するや否や、精一杯の笑顔で挨拶してくる米人従業員も実際に居たりしますね。しかも、毎回毎回、一生懸命作った「特大」スマイルを投げかけてくるんです!笑「あんた、何か企んでるでしょ?You're up to something, aren't you?」みたいな。いつもジョークを飛ばすフレンドリーな人なんで、彼のことを冗談で「つくり笑いさんMr. Fake Smile」と呼んでいるのですが・・・笑
何はともあれ、適度なスマイルは必要不可欠ですね。
挨拶の原則(4)挨拶を返す
挨拶をされたら、挨拶を返すReturn a greeting.。当然のことのようなんですが、実際にはできていない人も見かけます。挨拶をしているのに相手が無言だと、「無視されたのかな?」と不穏な雰囲気を感じ取ってしまうこともあるため、挨拶は必ず返しましょう。
また、人によって挨拶を返さない、という人も居ます。実際にあった話しですが、アメリカ人にはいつも挨拶を返すのに、同じ日本人スタッフからの挨拶には無反応、という日本人駐在員がいました。このような対応は相手には必ず伝わってしまうものですし、差別discriminationと受け取られてしまう場合もあるため要注意ですね。
挨拶の原則(5)挨拶+スモールトーク
原則(5)は、会社や組織のカラーによっては「原則」とまでは言えないかも知れませんが、一般的なアメリカの職場では推奨される慣習として付け加えておきます。
日本の職場では、挨拶を交わしたらそのまま自分のデスクで即仕事開始、というのがごくごく普通の光景ですが、アメリカでは挨拶の後にちょっとしたスモールトーク small talk を始めることがあるんです(会社のカルチャーによっては一概にそうだとは言えませんが)。
ちなみに、スモールトークとは、「世間話」などと訳されることが多いですが、「ちょっとした軽いおしゃべり」のことです。意外にこのスモールトーク、重要そうでなくて実は重要なんです。
たとえば、朝いつものように挨拶を交わした後で、「今朝はかなり冷え込んだよねIt was so chilly this morning.」とか、「朝の渋滞、マジでうんざりI hate the morning traffic.」など、ちょっとした会話を続けることがよくあります。スモールトークのネタとしては、天気の話題がいちばん手っ取り早いですが、議論になりそうな政治や宗教、その他不適切なトピックは言うまでもなく避けた方が無難です。
ちなみに、今朝、私が米人従業員と実際に交わしたスモールトークはこんな感じでした。
(私)Did you hear the news on the Amtrak train derailment in Washington?「ワシントン州の列車脱線事故のニュースきいた?」
(米人従業員)Yep! What a tragedy!「きいたよ、全くの悲劇だね。」
(私)How did that happen anyway?「いったいどうしたらそんな事故になるんだろうね。」
(米人従業員)I don't know. That's a good question though.「わかんないね。いい質問だけど。」
最近起こったニュースも不適切な話題でなければアリだと思います。このスモールトーク、時間にしたら30秒程度。なので、相手の仕事の支障になることもないです。一方、10分以上も長く話してしまうのは、もはやスモールトークの域を越えているので注意が必要ですね。
で、なぜこのスモールトークが重要なのかというと、コミュニケーションを円滑に継続していく上での潤滑油的な役割があるのです。このようなちょっとした会話の積み重ねが、よい職場環境を構築し維持していくことにつながるからです。
日本の職場であっても、仕事の話ししかできない人に魅力など感じませんよね?特にアメリカでは、会議や商談を始める前や、エレベーターや社内で上司や他の部署のスタッフとすれ違ったときなどにもスモールトークが交わされます。会議や商談ではスモールトークを経ずにいきなり本題に入ってしまうと、唐突感が出てしまい、その後の会話の雰囲気もどこか不自然になりがちです。スモールトークができない人は、「気難しいdifficult 」、「近寄りがたい unapproachable」という印象を持たれてしまいます。
このように、何気ないスモールトークの積み重ねがよりよい人間関係や職場環境を構築していくことにつながっていきます。毎朝必ずスモールトークをしなければいけない、というわけではありませんが、状況に併せてできる限りスモールトークを始めて見ましょう。
以上、アメリカの職場では、これら5原則を意識した挨拶をするように心がけましょう。
日本の英語の授業で習った挨拶表現、実はその半分近くがアメリカの職場では使われていない?!?
具体的にアメリカではどんな挨拶表現が実際に使われているのでしょうか? ・・・その前に、「日本の英語の授業で教わった挨拶表現の半分近くは、アメリカの職場では使われていない!」という現実をお伝えしたいと思います。
“Hello.” “How are you?” だけが、英語の挨拶だと思っていませんか?
最もありきたりな挨拶表現の、”Hello.” “How are you?” ですが、毎日の職場でいつも顔を合わせている同士で使うことは滅多にありません。朝の出社時の挨拶は、通常 “Good morning.” だけで十分です。
“Hello.” はむしろ来客に対して、または電話の受け答えで使います。同じ職場の従業員同士や気の知れたクライアントに対しては、”Hello” よりもくだけた”Hi” と言う方が圧倒的に多いです。
一方、”How are you?” は、「使うべきではない」というわけではありませんが、以下のような別バージョンも言えると、挨拶表現のマンネリ化を防ぐことができます。
・“How's it going?“・・・「調子はどう?」: “How are you?” よりもくだけた表現。この表現、以前住んでいたアパートの近所の人が、わたしの顔を見るなり、常にこの表現で挨拶してきました。たしかに、日常会話で実際によく使われている表現です。it は、あなたの生活や人生の状況を指しています。How’s は、how is の省略形です。
答えるときは、”Pretty good.” “It's going well.” などが無難な受け答えでしょう。
以前、私が職場の同僚にこう挨拶したところ、”It's just going.“ と答えてきました。少しつれない受け答えですが、”How’s it going?” が文字通り「あなたの人生はどのように進んでいるか?」と聞かれているので、彼はあえて文字通りの質問と捉え「(私の人生は)ただ進んでいるよ」と答えてきたわけです。つまり「まあ、なんとかやってるよ」「良くも悪くもない」(= “So, so.“)くらいな意味ですね。
・“How's everything going?“・・・「調子はどう?」: 上の “How’s it going?” の it が everything になっただけで、基本的に意味は同じです。
・“How're you doing so far?“・・・「元気でやってる?」: How’re は how are の省略形。so far は、「これまで」「今のところは」という意味なので、「ここまでどんな調子ですか」ときいています。答えるときは、”I'm doing great.” とか “So far so good.“「今のところはいいですよ」などが無難な回答例です。
・“What's new?” “What's going on?“・・・「最近どう?」「最近、何か変わったことあった?」: こうきかれたら、近況を答えるか、特に何もない場合は “Nothing much.” とか “Nothing new.” 「特に何もないかな」と答えます。What’s は、 what is の省略形です。
これを機会に、”Hello.” や “How are you?” 以外の表現もしっかり覚えて、実際の会話で使ってみてください。
“Fine, thank you. And you?” は正直まったく使いません!
“How are you?” ときかれたら、”Fine, thank you. And you?” で返す。・・・日本の英語の教科書では、あたかも定番かのごとく書かれていた表現ですが、正直アメリカ現地で使われているのをまったく聞いたことがありません。よって、この表現は使わないようにしましょう。
「調子はどう?」ときかれた場合は、状況により以下のように答えてみましょう。
調子がいい場合の回答例
・I'm fine. How are YOU?「元気だよ。君の方は?」(最後の YOU は強く言う)
・I'm good. How about yourself? 「調子いいよ。君は?」
・So far so good.「今のところは順調です。」
・I'm great! Thank you for asking.「元気だよ!聞いてくれて、ありがとう。」
調子が良くも悪くもない場合の回答例
・Okay.
・Not too bad.
・So-so.
どれも「まあまあかな」に近いニュアンスです。ただし、言い方によっては相手に「どちらかというと調子が悪いのかな」という印象を与えることもあるため注意します。
調子が良くない場合の回答例
・Not good.「調子がよくありません。」
・I'm a little tired.「少し疲れています。」
・I'm very exhausted. 「へとへとです。」
・I feel sick.「気分が悪いです」
調子がよくない場合は、上記のように受け答えをした後に、簡単に理由を付け加えるのがいいでしょう。
“How do you do?” は古臭い?
これまで覚えた表現の中で、これも使われないな、という表現が「はじめまして」という挨拶 “How do you do?” 。実際に同僚の米人にきいてみましたが、「古風でかなりフォーマルな表現だ」と言っていましたね。
では、代わりにどんな表現が使われているかというと・・・
・Nice to meet you. 「はじめまして」
・Great to meet you. 「はじめまして」
・It's a pleasure to meet you.「はじめまして(お会いできて嬉しいです)」
meet の代わりに、see に置き換えて言うこともできます。
英語では表現しづらい、日本の会社で使う基本的な挨拶
日本の会社では日ごろから普通に使っている基本的な挨拶(「お疲れ様」など)であっても、実際に英語でそのまま置き換えるのが難しい表現です。日本語特有の挨拶なので、英語ではどう言ったらいいのだろうか? そんな表現を集めてみました。
「お疲れ様です」
日本の会社では、社内のトイレや廊下で上司や上役とすれ違った際に「お疲れ様です」と声をかけることがありますよね。これ、英語ではどう表現したらよいでしょうか?
「お疲れ様」のニュアンスをそのまま上手に伝えられる英語表現など、実は存在しません。そもそも、日本語の「お疲れ様」というのは、相手の労苦をねぎらう意味で用いる言葉。アメリカでは、社内で上司や上役とすれ違っても、苦労をねぎらう言葉など普通はかけないんですね。では、そのまま何も言わずに素通りか、というわけでもなく、きちんと挨拶はします。
社内で人とすれ違ったときは、相手が誰であっても一様に “Hello.” “Hi.” と声をかければ十分です。もしくは、会釈だけでもOKです。
「行ってきます」「行ってらっしゃい」
日本の会社では、外出する際に「行ってきます」と声をかけ、それに対して「行ってらっしゃい」と返しますよね。これらの挨拶も、英語では決まりきった表現がありません。このような状況においては、以下のような会話が想定されます。
(外出する社員) I'm going to A Company for a meeting. 「(今から)打ち合わせでA社に行ってきます。」
(見送る社員) Ok, see you later.「了解。それでは、またのちほど。」
いたって単純ですね。打ち合わせの会議が商談目的などであれば、外出する社員に、「がんばって!」Good luck! と声をかけてもいいですね。
「ただいま帰りました」「お帰りなさい」
これらの挨拶も日本語独特の表現です。外出先からオフィスに戻ってきた社員が「ただいま帰りました」。そして、それに対して「お帰りなさい」と返します。これに代わる英語の定型表現もありません。
このような状況において英語では、戻ってきた社員は単に “Hi.” と声をかけるくらいでしょうか。それに対して、”Hi.”とそのまま返すか、”How did the meeting go?” 「会議はどうでした?」などときいてみてもよいですね。
「お先に失礼します」「お疲れ様でした」
退社時の挨拶「お先に失礼します」、そして退社する社員に返す挨拶「お疲れ様でした」。これらの挨拶に代わる決まった英語表現も存在しません。
「お先に失礼します」に当たる表現は英語では単に、”Good night.” または “See you tomorrow.“。これらの挨拶に対しては、 そのまま “Good night.” “See you tomorrow.” で返します。金曜日の退社時は、”See you next week.” で、これに対しては、”Have a good weekend!” と返してもいいですし、休暇の前であれば “Enjoy your vacation!” などでもOKです。
「宜しくお願いします」
何か用事や仕事を依頼するときに使う「宜しくお願いします」。日本語では便利な表現ですが、英語ではぴったり来る表現がありません。また、個々の状況により呼びかける言葉も違ってきます。以下に、2つの状況における表現例を挙げておきます。
*仕事を依頼する場合:
Thank you for your help.「手伝ってくれてありがとう」
または、単に、”Thank you!” でもOKです。
*初対面の取引先に対して「今後とも、宜しくお願いします」と言う場合:
We look forward to working with you.「一緒に仕事ができるのを楽しみにしています」
日本語では型にはまった挨拶がある一方、英語では固有の表現が存在していないため、英語のほうがくだけている、と言えるかもしれませんね。状況に応じて、適切な表現を使うようにしましょう。
「アメリカの職場での挨拶」まとめ
1)アメリカの職場で外せない「挨拶5原則」
[原則1] 自分から、平等に
[原則2] 常にアイコンタクト
[原則3] スマイルを忘れない
[原則4] 挨拶を返す
[原則5] 挨拶+スモールトーク
2)日本の英語の授業で習った挨拶表現の半分近くは、アメリカの職場では使われていない。
*”How are you?” だけではなく、”How’s it going?” など他の表現も使ってみよう。
*”Fine, thank you. And you?” は、まったく使われないため注意。自分のそのときの調子により、”I’m good.” “So far so good.” “Not too bad.” などで返す。
*「はじめまして」を意味する “How do you do?” は、古くてフォーマルな表現。”Nice to meet you.” “It’s a pleasure to meet you.” などの表現を使おう。
3)職場における日本語特有の挨拶は、以下のように置き換える。
*「お疲れ様」⇒ 社内で人とすれ違った際には、”Hello.” “Hi.” と声をかけるか会釈をする。
*「行ってきます」⇒ “I’m going to ~.”
*「行ってらっしゃい」⇒ “See you later.”
*「ただいま帰りました」⇒ “Hi!”
*「お帰りなさい」⇒ “Hi! (How did the ~ go?)”
*「お先に失礼します」⇒ “See you tomorrow (next week).” “Good night.”
*「お疲れ様でした」⇒ “See you tomorrow (next week).” “Good night.”
*「宜しくお願いします」⇒ 状況に応じて、”Thank you for your help.” “We look forward to working with you.”などを用いる。