ハリケーン・ハービー Hurricane Harvey がテキサス州を直撃、猛威を振るっていますね。現地時間8月29日現在では、
・少なくとも死者10人 At least 10 people have been killed.
・洪水で流された住宅に多くの住民が取り残されている Countless residents were trapped in flooding home.
・・・などの報道も。
テキサス州知事のグレッグアボット(Greg Abbott)は、ハリケーン・ハービーについて、
・「これまでにアメリカが経験したことがない大災害の1つ」 One of the largest disasters America has ever faced.
・・・とコメント。
現在は、勢力が衰えて熱帯性低気圧 tropical storm になったものの、ハービーは31日にかけてもテキサス州に停滞するとの予報もあり、予断を許さない状況。
毎年この時期になるとハリケーンのニュースが出てきますが、今回のコラムでは、このハリケーンに関する豆知識や役に立つ英語表現をお届けします。
目次
そもそもハリケーンの名称になぜ人名が使われているのか?
今回のハリケーン・ハービー(Harvey)や、2005年に1200名以上の死傷者を出したハリケーン・カトリーナ(Katrina)。なぜ、アメリカではハリケーンの名称に人名を使っているのでしょうか?
答えはすばり、「名前の方が分かりやすいし、覚えやすいから!」
かつては、緯度 latitude と経度 longitude の数字を使っていたこともあったようですが、特に正確なハリケーン情報を求めている海岸沿いの住人にとっては、分かりにくい confusing、と不評だったようです。
このような理由により、世界気象機関 World Meteorological Organizations がハリケーンにつける名前をアルファベット順に in alphabetical order リスト化したようです。
ハリケーンに付ける名前は2022年まで決まっている!
ご覧のとおり、今年2017年から2022年まで毎年21個の名称がアルファベット順に並んでいますね。アルファベットは全部で26文字あるので、ここに漏れているは、Q, U, X, Y, Z の5文字になります。これらの文字で始まる名前は数が少ないので使われていない、というのは容易に想像つきますよね?
また、これらの名前は・・・
・6年の間隔を経て、繰り返し使うこともできる。Names can be repeated after an interval of six years.
・・・とのことです。
一方、場合によっては、このリストから永久追放(?)される名前もあるようです。どういうことかというと・・・
大被害をもたらしたハリケーンの名称は、「リタイヤ」させられる?!
年代別、未使用となったハリケーン名
The names of especially severe storms are permanently retired from use.
直訳すると「特にひどかった嵐の名前は永久的に『リタイヤ』し、使用されない」。つまり、大きな被害をもたらしたハリケーンの名称は、その後はもう使わない、というわけです。
この retire という動詞の使い方、おもしろいですね。通常、retire は「退職・引退・退場・撤退する(させる)」の意味で使うことが多いです。(自動詞・他動詞の両方で使用。)
ここでの retire は、to get rid of (to remove)「除外する、除く」の意味で使われていて、特に「機械を使わなくする」という意味合いで使うこともあります。
My cell phone was 5 years old, so I had to retire it.「私の携帯は5年も使っているので、お蔵入りにした。」
hurricane、cyclone、typhoon の違いって何?
嵐(storm)の呼び方も、ハリケーン hurricane、サイクロン cyclone、台風 typhoon の3通りありますが、どう違うのでしょう?
簡単に言ってしまうと、嵐の発生する場所 location where the storm occurs により呼び方を変えているだけです。
嵐の名称 | 嵐の発生場所 |
hurricane | 大西洋(Atlantic Ocean)および東太平洋(Eastern Pacific Ocean) |
cyclone | インド洋(Indian Ocean)および南西太平洋(South Western Pacific Ocean) |
typhoon | 西太平洋(Western Pacific Ocean) |
よって、特に嵐の程度や特長によって呼び名が変わっているわけではないです。
ハリケーンや台風の話題で使える英語表現
会話例1:ハリケーン・ハービーがテキサスに接近中!
(Friend A) Did you hear the news about Hurricane Harvey?
(Friend B) Yeah, it's approaching Texas now. They say it's the worst storm to strike the state in 12 years.
(Friend A) It's now been upgraded to a category 2 storm!
(Friend B) No wonder. Meteorologists have warned the hurricane will be a monster storm.
<日本語訳>
(友人A)ハリケーン・ハービーのニュース、きいた?
(友人B)うん、今テキサスに接近中だってね。テキサス州を襲うストームとしてはこの12年で最悪なハリケーンになるらしいよ。
(友人A)カテゴリー2に勢力を増したらしいね。
(友人B)たしかに。気象予報士がこのハリケーンはモンスター級になるって警告してたよ。
<語句解説>
approach~ 「~に接近する、近づく」(目的語を必要とする他動詞で使用)
(注意) approach は目的語を必要としない自動詞としても使えます。
be upgraded to ~ 「(~に)引き上げられる、格上げされる」
(注意)upgrade も approach と同様、自動詞としても使えます。
meteorologist 厳密には「(予報以外にも調査や研究を行う)気象学者」だが、アメリカの天気予報の番組では気象予報士に当たる。(名詞)
会話例2:台風10号が関東地方に接近中!
(Friend A) Typhoon No. 10 is approaching the Kanto Region.
(Friend B) Did you see the sky? It looks threatening!
(Friend A) I hope the classes will be called off tomorrow.
(Friend B) The school will be closed unless the typhoon altered its course and missed us.
(Friend A) So far, there are no signs of abating.
(Friend B) After the typhoon is gone tomorrow, it should be a clear day.
<日本語訳>
(友人A)台風10号が関東地方に接近しているね。
(友人B)空、みた? 雲行き怪しそう。
(友人A)あした、授業中止にならないかなぁ。
(友人B)台風がコースを変えて、我々のところからそれない限り、休校になるよ。
(友人A)今のところは、台風が弱まる気配ないね。
(友人B)明日台風が去ったら、台風一過でよく晴れるよ。
<語句解説>
threatening この場合は、「(天候・雲行きが)あやしい」。通常は「脅迫的な、脅迫の」の意(形容詞)。
call off (= cancel)「中止にする、取りやめる、解消する」
unless (=if not)「もし~でないなら」(接続詞)
alter (=change)「変える、変更する、修正する」
abate 「(量・程度・圧力などが)減少する、弱まる」(動詞)
今回のコラムでは、アメリカのハリケーンの名称にはなぜ人名が使われているのか、について解説してみました。テキサスでは今現在も救助活動や復旧作業が進められており、Harvey Relief(ハリケーン・ハービーの義援金等救済活動)も全米の至る所で行われています。テキサスの一刻も早い復興が望まれます。
一方、次の大型ハリケーン(Hurricane Irma)がバハマ諸島、フロリダ半島に近づいているようなので、こちらのハリケーンの動向も気になるところです。
前回のコラム「使うと『頼りがいがあるなぁ~』と思われる表現:I got your back!」は、こちら。